鉄馬の聖人

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今日は14:30から四ッ谷ミッドブレスで俺のオリジナルスタジオエクササイズ「カクトウ機能美っくす」を担当。
その為に、昼過ぎに家を出てバイクで出発。ようやくの春の訪れを感じる暖かな陽射しを浴びて東8を駆ける。
その時に気が付いた、
後40キロしかガソリンがもたないな、と。
そして、またしばらく走って気が付いた、
財布を家に忘れた、と。
四ッ谷までは、後15キロ。
引き返したのでは、スタジオ担当の時間に間に合わない、
帰り道で何処までガソリンが持つのか、キモソゾロな運試し。
どうにか成るさっ、と四ッ谷に着いてエクササイズを開始。
こんな時に偶然ポケットから500円玉が出て来たらどんなに助かるだろうか、
そんな事に想いを巡らせて四ッ谷での勤めを終えたのだった。
GYMを出て、バイクにまたがり祈るように低燃費走行を心掛ける。
夕暮れを走ること数キロ、トンネルにさしかかる。運が善ければ後10キロは行けるのでは…。
と、その時感じる微妙なノッキング。
そして数百メートル後に来た、予想よりも遥かに早いあきらかなノッキング。
トンネルの真ん中でエンジンが停止。バイクを降りて路肩を押すしかない。
もはや恥も外聞も無い。
これから20キロの道のりを体力の続く限り押すべきか?
或は、バクチに負けたつもりの出費でタクシーで帰宅して帰宅時に支払い、電車で停車場に戻って、再びバイクをスタンドまで押してガソリン補給して…。
バイクの重量と闘いながら対策に思案する。
トンネルの出口付近は登り坂。意外と早く訪れた息切れと体力の消耗、
その時だった、横を走るデカイバイクから声がした「どうしました?!」
まとまらない考えと、恥ずかしさで「ガス欠です」としか応えられない俺。
また声がする、「大丈夫ですか?」
びた一文持っていない状況も恥ずかしく、独りで解決しなくてはと、「大丈夫です」と俺。
トンネルを出て、
歩道に乗り上げて息を整え、新宿駅前の坂を見据えて決心し再びバイクをスクラムで押す。
すると、さっきのデカイハーレーも歩道に入って停車した。
「ガス欠ならこっちのタンクから分けるからっ!」
ヘルメットを脱いで駆け寄るバイカーは小柄で60歳を越えていた。
財布を忘れて無一文である事を聞いて、
ハーレーの後部席に乗せていたご婦人に灯油ポンプを買いに走らせ、その間にサイドバックから道具を取りだし給油の準備を手際良く調える初老のバイカー。
急な状況に、不足した道具を補うために今度は自ら走って調達に出る。
作業を手伝いながら、
この状況で金額を請求されるのも仕方が無い話かなと、ぼんやり考える。
法外の請求を吹っ掛ける新手の詐欺で無ければ良いのだがとも、ぼんやり考える。
仮に、請求されなくとも、この場所から自宅までのタクシー代金相当の支払いは後日お礼としてと、大人として考える。
しかし、この人達は何で見ず知らずの俺に、こんなに寒風の中を時間を費やしてくれるのだろうかと、只ただ考える。
工夫を重ねて給油が終わりエンジンを掛ける、息を吹き替えした走行可能状態に安堵する。
懸命の作業の後に「ご連絡先を教えて頂けませんか?」
と言う俺の応えに
「今度、路で出逢ったらHey!って挨拶してくれればいいや!」
「冷えて、ションベンしたくなったから見送らないで良いから、先に帰っていって!」
との言葉に俺は、手を握り頭を下げて感謝を現すしか方法がなかった。
無償で尽くしてくれた見ず知らずの人に、
俺は何も出来ない男である事に不甲斐なく、
この感謝は、その時に出逢った困っている誰かへの無償の手助けでしかご恩返しは出来ないのかと想う。
初老のバイカーはジェダイの騎手の様だった。
カッコいい男に出逢った!
感謝。


鉄馬の聖人” への13件のコメント

  1. なんてステキな出会いですか!!
    困った時に、何も言わずてを差し伸べてくれる人の、心の温かみは嬉しいものですよね!(^人^)

  2. 相変わらずのエネルギッシュな日々!!
    この度、なんち♪改めました。(^o^)/
    頭も丸ボーズの新弟子さん風に。(^_^;)
    また、宜しくお願いします♪(^^)

  3. 渋いバイカーの方ですね。アキラさんでもハーレーは重いかあ。
    自分のスカイウェイブも200キログラム以上ありますから、ガス欠は恐いです。
    でも、よいトレーニングになりましたね。

  4. 初めまして。
    当方、新日本プロレスのジュニア時代以来からのプロレスファンで、歴代のライダーシリーズのファンでもあります、50代男性です。
    平成ライダーシリーズの中でも、パイオニアの存在である、「クウガ」へのAKIRAさんの出演は、最高の一幕であったことを、昨日のように覚えております。
    そして、こちらも最高のお話です。まるで情景が見えるかのような素晴らしさが伝わって来ます。
    失礼では有りますが、このお話を読んで、まるで、立花のおやっさんが時代を超え、初老の方に姿を変え、AKIRAさんに魂を届けに来たのでは、とさえ思いました。
    ライダー繋がりで恐縮です。が、AKIRAさんの愛車がハーレーであり、歴代ライダーの「スーパー1」のマシンも、偶然ではありますが、ハーレーの改造車でしたので(立花藤兵衛役の故・小林昭二さんの出演は、蛇足ながら「ストロンガー」までですが)。
    素晴らしい出会いだと思います。正にライダー冥利に尽きます。いいお話に感謝です。
    そして遅ればせながら、新団体の旗揚げ、おめでとうございます。長文にて失礼しました。故・石ノ森章太郎先生の故郷であります宮城から、団体のご成功をお祈り致しましての結びとします。有り難うございました。

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